CFFジャパン事務局スタッフのブログ

NPO法人CFFジャパン事務局スタッフのブログです。仕事のことに限らず色んなことを書いていく予定です。

『「ロヒンギャ」難民問題』ご存知ですか?

みなさんこんにちは。事務局の田代です。
事務局職員ブログとってもご無沙汰ですね。
 
年の瀬も近づき、2017年も終わろうとしていますね。
(ちなみに事務局は今日が仕事納めです!)
CFFで働くようになってから、時が経つのが早すぎてびっくりします(笑
 
さて、この夏にミャンマーへ行ってからずっとシェアしたいなと思
ここまで書けなかったことがあるのですが、
これをせずには年は越せない!と思い久々にブログを書いてみました。
かなり長いブログとなってしまったので、
読みたいなと思ってくださった方も覚悟してスクロールしていってください(笑

 
 

みなさん『「ロヒンギャ」難民問題』ご存知ですか?
 


東南アジア最大の難民問題として、最近メディアでも大きく取り上げられています。
ミャンマーの西側にあるラカイン州というところで、特に今年の8月25日に「アラカンロヒンギャ救世軍」(ARSA)を自称す武装集団がミャンマー政府軍(国軍)を襲撃したことをきっかけに、
大量の難民がバングラデシュに流出しました。
その数は現時点でおよそ60万人といわれおり
バングラデシュ側に避難した人々も厳しい生活を強いられています
多くの緊急支援のNGOがこの「ロヒンギャ」難民問題に対して活動を起こしています。

 

みなさん、この問題に対してどのような認識をもっていますか?
 


ミャンマー国軍がイスラム教徒である「ロヒンギャ」を迫害している
ミャンマーの国教は仏教で、仏教徒も8割程度。イスラム教徒だからって差別するなんて!
ミャンマーが悪い)

アウンサンスーチーはこの件に対して何も発言していない
→一番偉い人なのに何で?国としてこの問題を黙認しているのかな
 

まとめると…厳しい状況に立たされている人が多くいるにも関わらず、
その根源となっているのがミャンマー国軍で、
国のトップのアウンサンスーチー史が何も発言していない
=この問題に対してミャンマー政府は逃げている。
 

かなりざっくりとですが、この問題に対してこんな印象を持っている人が多いのではないかと思います。
そもそもよくわからないという人も多いかと思いますが。


この夏CFFでは、初めてミャンマースタディツアーを開催しました。
 

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(訪問先の幼稚園で。初めて出会う外国人に最初はびくびくだった子どもたちとも仲良くなれました♪)
 
 
期間がちょうど9月12日〜という
この話題に対してもかなりほっとな時期で
ツアーの訪問先で、「ロヒンギャ」問題に関しての見解を聞く機会がありました。

私は専門家ではないので、
この問題に対して個人的な意見を述べることはできないのですが
現地で聞いた話をみなさんにもお伝えしたいと思います。
 
 
この問題に対しても色々な見解がありますが
ここからの話も、あくまでも一団体の一部の人々から聞いた話として読んでもらえたらと思います。
 
 
 ・・・・・・・
 

今回訪問したのはThe 88 Generation Peace & Open Societyという民主化運動団体です。
(以下88事務所と略します)

団体の代表はミャンマー国内でアンサンスーチー氏に次ぐほどの人気がある民主化運動家のミンコーナイ氏。
彼自身学生運動のリーダーだったこともあり当時の軍事政権によって何度も投獄された経験を持ちます。
 

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(中央がミンコーナイさん)
 
 
釈放されてからこの団体を立ち上げ、政治家としてではなく運動家として
国の民主化に貢献してきました。
88事務所のとなりにはデモ運動の記録が残された小さな記念館があり、
デモ当時の写真や映像などを見ることができます。
 

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(写真中央にいる女性が、1988年デモ後にスピーチをするアウンサンスーチー氏)


今回88事務所を訪問したのは、
軍事政権によって統治されていたミャンマーの歴史を学ぶため、
また当時のデモの様子を聞くことが目的でした。
 
しかしながらちょうど「ロヒンギャ」のことが問題になっており、

デモの話だけでなく「ロヒンギャ危機に関する話を聞くこともできました。

予期せず記者団に対して現場の様子を記者会見する現場にも遭遇しました。

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(記者会見にのぞむ88事務所のスタッフのみなさん)

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(一番後ろで見学させていただきました。)



以下の内容は、

・記者会見前にミンコーナイ氏から伺った話
・記者会見の中で話されていたこと
・CFFミャンマー現地人スタッフから聞いたこの問題の見解(一市民の意見)
をまとめたものとなります。

()内に書かれているのは、私からの補足情報です。


=====

ミャンマーの人々の「ロヒンギャ」に対する見解
 
→そもそも差別的な意識のあるイスラムバングラ人=「ロヒンギャ」という呼び方をミャンマーの国民はしない。

(「ロヒンギャ」という言葉は、1982年に当時の軍事政権によって廃止されています。
政策の意図としては移民として入って来た人々に国籍を与えないということが大きいですしこれはこれで問題ですが、
その影響もありミャンマー国民は「ロヒンギャ」とは呼びません。
あくまでもラカイン州の一部にバングラデシュ人が住んでいるという意識を持っている。)
 
→「ロヒンギャ」の中には、市民権を持っている人もいる。
移民としてバングラデシュからミャンマーに入って来て3代目になるなど、
ミャンマーでの滞在歴が長いため市民権が与えられているケースもある。
つまり「ロヒンギャミャンマーの国民として受け入れている事実がある。
 

▼『大多数が「仏教徒」であるミャンマーにおいて、少数である「イスラム教徒」への迫害がある』ということに関して
 
→そこに移民・難民の問題はある。
けれども世界の人々が思っている宗教間の対立という意識は、ミャンマー国民にはない。
宗教差別と強調し問題を大きく報道しているのは、大国のメディアによるプロバガンダだ。
 
ミャンマーの人たちは、「宗教を絡めれば世界は注目するし、(世界がミャンマーを)非難しやすい」捉えている。)
 
上記にもしたように、「イスラム教徒」の「ロヒンギャ」という意識はない。
地域によって差別意識を持っている人もいるかもしれないけれど
ミャンマー全体として迫害しているといったような取り上げ方は過剰。
 
ミャンマーは135もの民族がいる国であることもあり、
根本的には他民族とも融和性や協調性をを大切にしている。
 
少数民族対立の問題も現状としてありますが、
元をたどれば植民地支配政策と軍事政権による影響も大きい。)
 
大国にある問題から、世界の注目をそらしたいがために
小国であるミャンマーの問題が誇張されて報道されている。
 
 
上記に加えて補足の情報
●「ロヒンギャ」が被害にあっていることが大きく報道されているが、
被害にあっている人の中の3%程度は少数民族ミャンマー人もい
 
→上に記した「ロヒンギャ」の迫害と関連してくるが、
今回の問題の根本がミャンマー軍による「ロヒンギャ」の迫害とだけ言えない理由の一つ。
ミャンマー側の認識としては、テロリストがミャンマー軍と「ロヒンギャ」の間をかき回している。
 
これらをふまえて、「ロヒンギャ」全てを迫害しているといったようなことは言えない。
 
 
アウンサンスーチー氏が「ロヒンギャ」の問題に対して何も発言しないことに関して
 
→発言しないということが大きく報道されているが、発言していないわけではない。
 
ロヒンギャ」の問題は、色々な問題が複雑に絡み合っているものであり、アウンサンスーチー氏はもっと大きな視点からこの問題に対して言及している。
記者たちがほしいような回答をしていないから「発言していない」とみなされているだけだ。
 
=====
 
 
またミンコーナイさんに直接話を伺った際に、
ツアー参加者の1人がこのような質問をしました。
 
 
Q. 「今、世界でアウンサンスーチーノーベル平和賞を取り消すことを求める署名が集まるような運動が高まっているが、それについてどう思いますか?」
 
 
これに対して直接的な意見は述べていませんでしたが、このように回答していました。
 
 
A. 「私たちは、アウンサンスーチー氏が国のためにこれまで多大な自己犠牲を払ってきたことを知っている。」
 
 
 
周りにいた88事務所のスタッフの方達も、この言葉にただただ頷いていました。
 
 
世界からどのような非難があったとしても、
国民のアウンサンスーチー氏への信頼が揺らいでいないことが伝わってきました。
 
 
・・・・・・・
 
 
みなさん、現地の人々の声を聞いてみてどう思いましたか?
断片的な情報だけでは、難しくてむしろよくわからないこともあったかと思います。
 
 
私がこの話を聞いた印象として思ったことは
 
「普段メディアから得ている印象と少なからず違うことがある」
 
でした。
 
私は今回の話を聞くまで
・「ロヒンギャという言葉がミャンマー国内で廃止されていること
・「ロヒンギャ」の中にも市民権を与えられたケースがあること
・現場で被害を受けている人の中には少数民族の人もいること
 
 
これらのことは恥ずかしながら知りませんでした。
またこの問題に対して、テロ組織の存在を示唆しているアウンサンスーチー氏の発言もよく理解できませんでした。
 
 
ただ、ここでの話を聞いてからアウンサンスーチー氏の発言を聞くと、
彼女が意図していることもなんとなく理解できるようになるかと思います。
 
*英語ができる方はぜひ聞いてみて!
2017年9月19日に「ロヒンギャ」問題についてのアウンサンスーチー氏の見解です。
 
 
 
 
2015年の選挙の時も海外メディア含め世界がミャンマーに注目
また国民民主連盟を、アウンサンスーチー氏を支持していたと思います。
 
新政権が始まってから1年半、
今度は手のひらを返したようにアウンサンスーチー氏を糾弾している(私の個人的な印象かもしれませんが)のは、なんだか不可思議にも感じます。
 
 
 
2016年に新大統領が就任した時、私はミャンマーにいました。
テレビで就任式を見ていた市民のみなさんが
抱き合って喜んでいたのを今でもよく覚えています。
 
半世紀にわたる軍事政権によって市民の生活に及ぼされた影響は大きく、
そこから脱却し新しい国を作っていくことは、非常に時間のかかることです。
 
ミャンマーに関しては憲法の問題もあり、新政権と軍の関係性もまだまだ難しさが残っています。
(ここら辺は話すとまた長くなるので、気になる方は調べてみてくださいね。)
 
 
けれども、国民一人一人が自分たちの国を作ろうという意識と自覚を持って
それぞれの場所で活動している姿には、
いつも心に迫るものを感じます。



今回の訪問での経験を経て、
目についた情報だけでなく、現地の人々の声を聞く重要性を再認識できましたし
メディアから流れる情報を鵜呑みにしない重要性も身にしみて感じました。

 
最後に…
ロヒンギャ」とミャンマーの間での対立関係というものは
歴史的に考えても実在しており、現在難民という形で大規模に表面化してしまっています。
 
ただこの対立構造にには、
第二次世界大戦時代に当時のビルマを占領した日本軍も関係しています。
 
 
日本という国に住んでいる私たちに、直接的に彼らのためにできることはほとんどないかもしれません。
けれども、日本人である私たちに、まったく関係のない問題と片付けてしまってよいのでしょうか?
 
 
 
 
ここまでおつきあいくださったみなさんにもう一度聞きます。
 
 
 
 
 
『「ロヒンギャ」難民問題』ご存知ですか?
 
 
 
 
**この記事のなかであえてカッコつきの「ロヒンギャ」を使っていたのは
そこに迫害の意味を込めた『ロヒンギャ』という言葉を現地では使っていない
というコメントに起因します。