ある子どもとの再会
ワークキャンプの合間の休みで、いまから数年前にフィリピンで初めて出会った女の子に会いに行きました。たぶん、5年ぶりくらいに。
幼い頃に親に見放されて妹と弟を連れて家を飛び出し、その後、事情があって一人だけ別の施設で彼女は育ちました。10年近く離れて育ったけれど、でも彼女は年に1回は妹弟のいる施設を訪問し、その逆もあったりして、そのつながりを途絶えさせませんでした。それから長い年月が経ち、施設を退所し、結婚し、子どもも授かった彼女。
彼女に再会したその日は家までお邪魔して、一緒にお昼ご飯を食べて、子どものことや旦那さんのことを話してくれて、弟や妹のこともたくさん話して、近くの海岸までみんなで散歩して…。
決して経済的に豊かな家ではないけれど家族とともに暮らし、船乗りとして長期出張の多い旦那さんの帰りを待ちながら、日々を過している。
「日中はおかしを作って、家の前で通勤通学中の人たちや帰宅前の人たちに、ここで売ってるの。そうやって少しだけど収入の足しにしてるんだよ。」そう話してくれた。フィリピンだったらなんてことのない本当に普通のお母さんの暮らしなんだけど、すごく平和で幸せな時間がそこにはあった。
どんな心境だったのかはわからないけれど、数年前に妹弟の手を引き家を飛び出し、食べものもなく、安心して寝る場所もなく、幼い子どもが背負うにはあまりに重すぎる現実を抱えて生きてきた。
そんな子が大人になって、いま子どもの手を握り歩く姿を見て「希望ってあるんだな。」「幸せってあるんだな。」そんなことをまぎれもない事実として実感していました。
幼い頃路上で育ったある人がこんな言葉をくれました。
「路上で生活していたときは希望があるかどうかなんて考えたこともなくて、きっとそのときの自分は”未来に希望があると思うか?”と聞かれていたら”NO”と答えていたと思う。でも、大きく育ったいま振り返って思うのはそのときの自分にも希望はあった。間違いなく。」
フィリピンに来ると、何年も変わらない子どもたちが生きる厳しい現実を目にして毎回とても心が苦しくなる。けれど今回は、同時に希望を感じさせてくれる時間がありました。
そんな出会いに心からの感謝とそしてこれからも幸せな時間が続くことを願って。
CFF事務局スタッフ
石井